外部カウンシル
1.宇田川幸則 教授(中国法)
(専門)
現代中国法、国際比較法、等
(言語)
日本語(Native)、中国語(Proficiency)、英語(Advanced)
(公職等)
名古屋大学大学院法学研究科 総合法政専攻 国際・比較法政 教授、
名古屋大学上海事務所 所長(〜2015年3月)、
中国社会科学院法学研究所 訪問学者(2002〜03年、2010〜11年)、
比較法学会理事、現代中国法研究会 運営委員、中日民商法研究会事務局長、等
(著書・論文)
『現代中国法入門〔第九版〕』(共著)〔有斐閣 、2022年12月〕(ISBN:978-4641048324)、
『中華人民共和国民法典I 対照条文編』国際共著(監修)〔商事法務、2022年3月〕(ISBN:978-4785729547)、
『中華人民共和国民法典II 資料編』国際共著(監修)〔商事法務、2022年3月〕(ISBN:978-4785729554)、
『中国物権法条文と解説』(共著)〔成文堂、2007年5月〕(ISBN:978-4792325190)、
『社会主義市場経済化と中国民法典』比較法研究85号(2025年1月)、
『米国カリフォルニア州判決を承認した中国法院の決定』国際商事法務46巻4号(2018年4月)
(研究等)
「無子超高齢社会の紛争解決メカニズム構築に関する日台中比較研究」〔研究代表者〕(研究課題番号:20K01241 2020年4月 – 2024年3月)〔科学研究費助成事業基盤研究(C)〕、
「中国の権威主義体制下における法の役割と限界についての比較研究 」〔研究分担者〕(研究課題番号:19H01407 2019年4月 – 2024年3月)〔科学研究費助成事業基盤研究(B)〕、
「中国における公正・公平な紛争解決と調解」〔研究代表者〕(研究課題番号:15K03077 2015年4月 – 2019年3月)〔科学研究費助成事業基盤研究(C)〕、その他多数
2.張瑞輝 教授(中国法)
(言語)
中国語(Native)、日本語(Proficiency)、英語(Proficiency)、ドイツ語(Proficiency)
(専門)
アジア法、民事訴訟法、不法行為法、医事法、等
(公職等)
名古屋経済大学法学部ビジネス法学科教授、法学博士、
ワシントン大学(University of Washington, USA)客員研究員(2012年2~3月)、
コンスタンツ大学(Universität Konstanz, Deutschland)客員教授(2018~2019年)、
中国民事訴訟法学会理事、等
(論文・その他)
「医療同意権の行使主体に関する一考察—中国民法典1219条および1220条にいう近親者を手掛かりとして」(1)名経法学48号(2024年1月)1頁、(2)名経法学50号(2025年2月)1頁
「中国における医療損害責任訴訟に関する司法解釈」(共著)名古屋大学法政論集 278号(2018年6月)263頁
「中国民法典編さんの動向」中部経済新聞(2016年4月6日)「オープンカレッジ」欄
(翻訳)
「中国民事訴訟における専門家助人制度の問題点と改善策」名経法学38号(2017年3月)47頁
「中国民事司法鑑定の現状と課題」名経法学38号(2017年3月)27頁
「中国民事訴訟における信義則の適用可能性(上)新民事訴訟法13条1項を評する」名古屋大学法政論集261号(2015年3月)301頁
「中国民事訴訟における信義則の適用」名古屋大学法政論集257号(2014年9月)361頁
「中国民事訴訟法における再審手続の展開」名古屋大学法政論集244号(2012年6月)12頁
「行政自己規制の可能性に関する分析」関西大学法学論集61巻1号(2011年5月)148頁
中華人民共和国における法律実務
今や世界第2の経済大国となった中国は、海外事業を展開する日本企業にとって最も重要な市場の一つとなっております。近時では、経済規模の拡大と社会の高度化に伴い、企業活動を取り巻く法的環境も複雑且つ高度化し、中国事業に関するリーガルサービスについても、現地の法律や社会の最新情報を踏まえたより高度なものが求められるようになってきています。中国特有のカントリー・リスクに加えて、企業のコンプライアンスに対する国民や政府当局の視線も益々厳しくなってきており、近年では経済安全保障面でのリスクの拡大や、個人情報などの情報安全に関する規制強化といった新たな場面も登場するようになりました。
弊所では、中国法研究に関して長年の経験と実績を有する宇田川幸則教授、中国人ネイティブである張瑞輝教授をオフ・カウンシルとしてお迎えし、クライアント様のニーズに応じて複数の中国法律事務所と連携・協力しながら、日本企業の中国事業に関する質の高いリーガルサービスを提供する体制を強化しております。中国法務に関する高度な専門性を有し、中国事業に関連するあらゆる法分野に関し、企業の多種多様なニーズに応じて、豊富な知識・経験やノウハウに基づく実践的なアドバイスや解決策をご提案いたします。
(1)対中投資
2020年1月1日に「外商投資法」が施行され、法令適用における内外資の格差解消が大きく進展しました。また、外資の参入を禁止又は制限する業種を列挙した「外商投資ネガティブリスト」の対象業種も年々減少し、外資の開放が進んできています。
- 有限会社、株式会社の設立
- 組合企業の設立
- 有限会社から株式会社への組織変更
- 株式譲渡ないし買収
- 増資
- 合併・分割・再編、その他、M&A
- 清算、再生、持分売却等
- ガバナンス
- 定款および各種社内規則の制定
- 株主総会、董事会、監事会および管理層運営規定
- リスクマネジメント
(2)会社法・M&A分野
会社法の改正や司法解釈の制定を通じ、以前と比較すれば定款自治が認められる範囲が広くなってきています。上記の「外商投資法」の施行により、外資が含まれる合弁企業に対しても会社法が直接適用されることとなり、会社法制上の内外資格差も解消されています。
- 代理交渉
- 法律情報の調査およびリスク評価
- 取引スキームの相談および設計
- デューデリジェンスおよび報告書
- 取引契約のレビュー、起案
- 取引に関する当局の許認可に関するアドバイス
- 当局の要求に従って法律意見書起草
- 許認可の代行
- M&A関連紛争の解決
(3)取引法分野
2021年1月1日に「民法典」が施行され、民事関係の法制度が一応完成したと云われます。中国ビジネスに関わる各種契約文書の作成、レビューは、今や必須の作業となっており、各分野における取引ルールについても、銀行、保険、信託、ファイナンス・リース、インターネット取引等の各分野においては中国特有のリスクや不透明性が存在するため、当該分野における現状の司法解釈や、実務上の事例を慎重に検討する必要があります。
- 銀行法務
- 保険法務
- 信託法務
- ファイナンス・リース法務
- インターネット金融法務
- 証券化法務
- 不良資産処理
(4)競争法分野
中国では、日本の独占禁止法にあたる「反独占法」や、不正競争防止法にあたる「反不正当競争法」が制定されており、カルテル、事業結合、市場支配的地位の濫用、不正競争行為の取締りがなされています。特に近年では、インターネット大手企業による独占的事業に対する取締りが強化されるなど、法執行面でも注目すべき事例が出てきています。
- 支配的地位および支配的地位の濫用に関する調査および分析
- 事業モデルや契約に対する競争法的観点からの審査
- 独禁法関連社内規則の制定、およびコンプライアンス審査
- 独禁法関係代理通報および通報された場合の対応策
- 提携契約書などに関する独禁法関連相談
- 経営者集中申告に関する国家安全審査アドバイス
- 独禁法関連民事、行政各種訴訟代理
(5)知的財産法分野
近年では、中国企業による特許、実用新案、意匠、商標の出願や国際出願が急増しており、「模倣品大国」から「知財大国」への変貌を遂げつつあります。「模倣品」事例も依然として多数発生しているものの、放置されてきた以前とは異なり、政府当局も摘発に力を入れてきています。外資企業の権利が保護されることも増えた一方で、中国企業から外資企業が権利侵害で訴えられるケースも増えております。
- 特許、商標の国際申請、異議申し立て、無効審判
- 知的財産に関する質権設定、許可、譲渡など
- 知的財産侵害に対する民事訴訟、刑事訴訟
- 知的財産の税関保護
- 中国における版権登録、授権許可、譲渡、版権貿易
- 図書、出版、テレビ、エンターテインメント、映画作品関連サービス
- スポーツ法務
- 商業秘密管理制度の構築
- 商業秘密侵害対策、民事訴訟、刑事訴訟
- 不当競争、商業賄賂
- ドメイン、インターネット業務関連登記サービス
(6)労働法分野
中国は、言うまでもなく社会主義国ですので、労働者に対する保護が相当程度に厚いものとなっております。具体的には、解雇時における解雇事由が列挙されており解雇理由が限定されていること、会社に対する経済補償金(退職金)の支払い義務があること、年次有給休暇の買取義務などがあります。また、近時は国内各地における最低賃金の上昇圧力も強く、会社における労務管理担当者にとっては留意が必要である。
加えて、中国においては地域によって求められる労働実務の運用が異なる可能性があり、各地域の地方法令を確認すべき必要性が高いなど、地方主義に基づくローカル・ルールの影響を受けている点にも留意が必要となります。
「労働法」、「労働契約法」といった法律が整備され、賃金、労働時間、解雇等について、注意すべきルールが多く定められています。労働者の権利意識も概ね高く、労働紛争が多く発生しています。
<取扱業務の例>
- 労働契約、就業規則、各種労務関連規程の作成、レビュー
- 労働契約の書面主義(固定期間、非固定期間、任務完了期間)
- 労働時間(1日8時間以内、週の平均労働時間は44時間以内)
- 社会保障制度(養老保険、医療保険、公傷保険、失業保険、生育保険)
- 有給休暇制度(10年未満:年5日、20年未満:年10日、それ以上:年15日)
- 特別休暇制度([探亲假])
- 経済補償金(労働契約の解除または停止の前12か月分の平均額等、賞与や手当なども含めて算出)
- 整理解雇(30日前までに工会または全社員に対して説明、意見聴取、労働行政管理部門への提出、解除又は停止)
- 時間外労働(中国労働法第41条等、残業代150~300%)
- 秘密保持規定、競業禁止規定
- 退職金制度に替わる経済補償金の上乗せ等
(7)コンプライアンス
中国では、刑法、不正競争防止法により、公務員に対する賄賂のみならず非公務員に対する利益提供(いわゆる「商業賄賂」)も違法とされる可能性があるなど日本法の扱いと異なる点があり、実務上留意すべき事項も多岐にわたります。また、社内の管理体制が不十分であることに起因する不正事件の発生も少なくありません。中国では、実態として、会社間の取引において不当なリベート、贈与、利益提供行為が行われることがたびたびあります。このような行為が、商業賄賂として認定されると、行政責任のほか、会社(責任者も含む)の刑事責任を追及され、ひいては、日本本社にレピュテーションリスクが及ぶこともあります。
①内部統制の構築とコンプライアンス違反行為防止
就業規則等の社内規程や、労働契約の条件に、秘密保持、実費の精算方式、退職社員の引継方式、不正をした場合のペナルティなど、現地法人の従業員が、不正を行うことを可及的に防げるような事前の措置を採ることができます。また、従業員ハンドブックを作成するなどし、中国の法律、法規、政策、規則の要求に適した会社のコンプライアンス制度確立のサポートをすることができます。
②役員・従業員へのコンプライアンス教育、研修の実施
ご依頼に基づき、御社の従業員のコンプライアンス意識の調査、コンプライアンスに関するリスク調査等を実施するほか、当事務所、中国弁護士による、従業員に対するコンプライアンス研修、教育等を行うことができます。
③不正調査・法的対応と企業価値の維持
中国現地で社内不正事件が発生した場合や、実際に不正の存在が疑われる場合など、実態調査の実施、コンプライアンス違反者の法律責任を追及するために必要な法的対応、会社の名誉ないしブランド価値が損なわれることを回避するために必要な措置について組織的対応を行うことが可能です。現地法律事務所や調査専門会社と連携して、慎重な事前調査、ヒアリング、証拠収集などを効果的に行います。
(8)データ移転規制、個人情報保護
中国個人情報保護法とは、中国における個人情報の保護を包括的に規律する法律で、2021年11月から施行されています。
いわゆる中国データ3法(個人情報保護法、サイバーセキュリティ法、データセキュリティ法)の中でも、とりわけプライバシー権保護に重点を置いて、事業者に対する義務と個人が有する権利を定め、個人情報の保護とその合理的な利活用を促進することを目的とするとされます。
欧州の一般データ保護規則(General Data Protection Regulation、以下「GDPR」)等の諸外国の個人情報保護法制と同様に、事業者が個人情報を取扱うにあたって法的根拠がなければならないとされており、本人から任意かつ明確な同意を得なければなりません。
したがって、日本企業やその中国現地法人が、中国において個人情報を取得するにあたっては本人同意が必要となる場合が多く、法的根拠なく個人情報を取扱うことは個人情報保護法違反にあたり、サービスの一時停止や終了、関連業務の停止、罰金といった処分を受ける可能性があります。
中国個人情報保護法の規制においては、特に、越境移転については厳格な規制が課されており、規制当局に対する届出が必要になる場合もあることに注意が必要です。
また、広範な域外適用の規定もありますので、中国に所在する方の個人情報を取扱う場合には、日本企業においても十分に注意を払わなければなりません。
- データ移転規制、個人情報保護に関する内部規定、契約文言のリーガルチェック、最新の法令情報に基づくアドバイス等
- 情報越境移転の適切な運用、安全審査実施に関するサポート
(9)現地訴訟、国際仲裁など
中国でビジネスを展開または進出した際に、日本企業が中国企業を訴えるケースと、中国企業から日本企業が訴えられるケースがありますが、その何れの場合も増加傾向にあると言えます。日本国の優れた技術やブランド価値が剽窃されることに起因して中国現地企業に対して訴訟等を提起すること場合はもとより、中国企業が日本企業に対して訴訟や国際仲裁を提起してくることも増加傾向にあります。しかも、近時の改正等により、いわゆる出国禁止措置を定めた法律が15に上っており(例えば、2023年4月26日付「反スパイ法」)、中国政府が出国禁止措置を発動できる対象がさらに拡大して、最高人民法院の記録では2022年に発動された出国禁止措置は内外人を併せて4万件近くに上ります。
取引上のトラブルや社内で労働紛争等が発生してしまい、当事者の協議により解決できない場合、訴訟または仲裁により解決することが一般的には考えられます。中国での紛争、訴訟対応として、以下を検討する必要があります。
- 現地における民事訴訟、
- 国際仲裁(中国国際経済貿易仲裁委員会 (「CIETAC」))
- 出国禁止命令に対する措置
- 証拠保全