インドは南アジア随一の面積と世界第2位の人口を持つ大国です。
12億人を超える国民は、多様な民族、言語、宗教によって構成されており、連邦公用語はヒンディー語、他にインド憲法で公認されている州の言語が21あります。また、識字率は74.04%です。有権者8億人の世界最大の民主主義体制国家でもあります。中央政府とは別に各州に政府があり大臣がいるため、州政府が一定の独立性を確保しています。主な言語だけで15を超えるため、インド政府が発行する紙幣には18の言語が印刷されています。ヒンドゥー教徒が最も多く、カースト制度による差別は憲法で禁止しており、都市部での影響は薄まっていますが、農村部では今でも影響は残っています。
インドの経済は、農業、工業、鉱業、ITサービス産業と多種多様の分野に富んでおり、労働力人口の3分の2が直接、或いは間接的に農業で生計を立てている一方、製造業とサービス業は急速に成長している部門であり、インドの経済に重要な役割を担うようになってきています。興味深いことに、アジア開発銀行(ADB)は、インドの中間層が向こう15年間で人口の7割に達するとの見方を2011年に発表しております。
インドの代表的な都市は以下のとおりです。代表都市の定義付けは、ASSOCHAM(インド商工会議所)の定義(2011年1月時点)によると、消費者層の大きさの観点ではインドの大都市を含むTier1がターゲットとなります。しかしインド都市部は農村部からの人口移動及び集中が続いており、Tier2,3の中には平均所得がTier1を超える都市もあります。Tier1は8都市あります。
【デリー】
インドの首都。ニューデリーとオールドデリーにわかれ、ニューデリーに行政区が置かれています。人口約1,700万人(Census2011より)の巨大都市で、インドにおける商業・工業・政治の中心地の1つです
公共交通機関が少ないインドですが、日本政府の円借款によるメトロが2006年に開通しており、注目を集めています。近年では、不動産価格の高騰や住宅不足等から衛星都市が発展しており、特にグルガオン、ノイダに人口が流入しています
【ムンバイ】
インド西海岸に位置する、Maharashtra州(マハラシュトラ州)の州都です。人口は約1,200万人(Census2011より)で、世界で最も人口密度の高い都市(2010Fobusより)とも言われています。ムンバイは金融都市として名を知られ、国内の金融機関だけでなく、多国籍企業の拠点も多く置かれています。また娯楽も大事なムンバイの産業の一つで、特に映画産業が有名です。余談ですが、特にムンバイで制作された映画は、ムンバイの旧称「ボンベイ」と「ハリウッド」を組み合わせた「ボリウッド映画」として知られています。
【コルカタ】
インド東部に位置する、West Bengal州(西・ベンガル州)の州都です。人口は約448万人(Census2011より)であり、インド文化の中心都市ともいわれています。主に音楽、舞踊、映画、文学の各分野で盛んですが、近年はITをはじめとする産業団地が次々と建設され、中産階級が居住する街が新設されたり、ショッピングモールが建設される等、急速に都市発展しています
【チェンナイ】
南インドのベンガル湾に位置する、Tamil Nadu州(タミル・ナドゥ州)の州都です。人口は468万人(Census2011より)であり、「南インドの玄関口」と呼ばれる国内第2の貿易港を有し、南インドにおける産業集積のハブ都市でもあります。主要産業は自動車、IT、エレクトロニクス、繊維、セメント、化学製品等があります。特に自動車関連産業が盛んですが、近年は、デリー首都圏に次ぐ日系企業の集積地として日本からの投資が急増しています。既に現地には日産、三菱自動車、ブリヂストンが進出しており、今後の経済発展が期待されている都市です。
【バンガロール】
IT産業、水の分配に関する暴動で有名です。
インドの経済成長率は、概ね年間7%から9%程度であり、産業はIT産業の他、自動車部品・電機・輸送機器といった分野が中心ですが、近時では、バイオ・医薬品・鉄道事業等にも拡大しています。労働力人口は毎年約1%ずつ増加ており、将来的に実質的な購買力を備えた消費者層(=中間層)となり有望な消費市場といえます。貿易は、輸出が石油製品、農産物、輸送機器、宝飾製品や医薬品、化学品、繊維等であり、輸入は 原油・石油製品、金、機械製品等が中心です。GDPは名目で年間2兆074億ドル(2015年:世銀資料)世界第10位。しかし、国民1人当たりのGDPは1,581ドル(2015 年:世銀資料)しかないため、世界水準の20%程にも及ばず、インド洋を隔てて南東に位置するスリランカと比べると半分ほどに留まっています。人口は2060年年ごろまで増加すると予測されており、中国を抜いて世界一の人口大国になると言われています。
インド投資のメリットは、どこにあるのでしょうか?
メリット1 巨大で、高い成長率が予測されるマーケット
インドは、若年層を含む12億人もの人口を擁し、2025年までに中産階級が6億人にのぼるとも云われる巨大な市場があります。国内市場の縮小に直面している日本企業にとって、成長著しいインド市場は魅力的であり、すでに多くの日本企業がインドに進出し、業績を上げています。
メリット2 理系に強く、若くて優秀な労働力が豊富
インドには若くて優秀で英語を話せる労働力が豊富です。毎年430万人もの新卒者がおり、うち90万人が理系です。高齢化で若年労働者の確保に悩む日本の実情とはかなり異なります。人件費も、日本国内と比べ2~3割程度と云われていますが、地域にもよります。
メリット3 ITや企業風土のグローバル化先進国
日本企業はインドのIT業界と連携することで、グローバルモデルを手にすることができます。コストの削減だけでなく、業務の効率化、さらには企業風土の変革にまでつながる。IT産業のアウトソーシング化は、中国、東南アジアでも一部行われてきていますが、一定水準以上のIT知識を有するインド進出の魅力も大きいと言えるでしょう。
メリット4 インド政府による投資促進・外資誘致策
連続する10年間の法人税非課税措置(タックス・ホリデー)があります。特別経済区(SEZ)の開発企業と入居企業には、法人税減免などの優遇措置が適用されますし、外国貿易政策(FTP)では、輸出振興を目的とした原材料の関税減免スキームなどが定められている。最近では、ピタンプール工業団地:MP州の商都インドール近郊、安価な土地代のほか、州外からの部品や原材料調達にかかる入境税、土地取得印紙税や電力税の免除、10年間の州間接税全額還付などがあります。
現在、インドの外国投資認可制度には次の2種類があります。
○ 自動認可制(自動認可ルート)
中央銀行であるインド準備銀行(Reserve Bank of India:RBI)への事後の届出のみで、自動的に投資が認可される制度。
○個別認可制(政府認可ルート)
2016年統合版外国直接投資政策(Consolidated FDI Policy)の通達(ネガティブリスト)に記載されている業種への投資案件の場合、事前に外国投資促進委員会(Foreign Investment Promotion Board:FIPB)から個別認可を取得する必要があります。また、出資の上限規制(49%以下など)がある。
個別ルートは、個別審査を経るためスケジュールの見通しが立ちにくく、また不承認となる可能性もあるため、通常は「自動認可ルート」の枠組みで利用するのが推奨されています。
インドで現地法人を設立する方法は、以下のとおりです。
1. 現地法人(Company)
(1) 会社の形態
インドの会社の形態は、次の3つに分類される。
◆株式有限会社(company limited by shares)
構成員の個人責任が、当該構成員が保有する会社の株式の未払い額に限定される。
◆保証有限会社(company limited by guarantee)
構成員の個人責任が、清算の際には、当該構成員が会社に対して資産を出資することを引き受けた額に限定される。
◆無限責任会社(unlimited company)
構成員の責任は無限である。
(2) 会社の種類
インドの会社の種類は、次の2つに分類される。
◆非公開会社(private company)
株式譲渡制限がない会社。株主が2人以上で最大限の株主数は200人になる(新会社法第2条68項)。また、取締役は2人以上必要である。その取締役2人のうち、1人は居住取締役である必要がある。居住取締役とは、前年度(1~12月)に182日以上インドに滞在した取締役のことである(新会社法第149条1項および3項)。一定条件のもと、「みなし公開会社」と規定される場合は、公開会社に求められるコンプライアンスと、ほぼ同様のそれが求められる。
新会社法の下で、非公開会社は一定のコンプライアンスと開示要件が緩和されている。詳細はインド企業省のExemption to Private Companies(1.07MB)を参照。
◆公開会社(public company)
株式譲渡制限がある会社
株主が7人以上、取締役は3人以上必要である。その取締役3人のうち、1人は居住取締役である必要がある。居住取締役とは、前年度(1~12月)に182日以上インドに滞在した取締役のことである(新会社法第2条71項、第149条1項、3項)。一定の規模以上の公開(有限責任)会社については、独立取締役、女性取締役、監査委員会、重要な管理職等の設置が要求されることに留意する必要がある。
(3) 設立手続き・書類
◆非公開(有限責任)会社(Private Limited company)
非公開有限責任会社の設立には、以下の3段階の手続きが必要となる。
第1段階:管理職認識番号(Director Identification Number:DIN)の取得
会社設立手続きにかかる各種書類の作成には、新会社の管理職(取締役)を番号によって識別する管理職認識番号(DIN)の取得が必要となる。申請方法は、企業省(Ministry of Company Affairs : MCA)にオンラインで、申請書と認証された関連書類を提出する必要がある。また、オンラインで申請書を提出できるように管理職(取締役)の電子署名(DSC)を取得する必要がある。
第2段階:会社名の承認
会社名は、所定のフォーム(FORM INC-1)にて、進出地域(州)の企業登録局(Registrar of Companies)に申請する。申請料は1,000ルピー。国内各地域における、企業登録局の一覧および各連絡先は、インド企業省のContact Listからアクセス可能。
申請に際してのガイドラインは次のとおり。
a. 各企業は、会社名として少なくとも3~4種類の代案を準備しなければならない。
b. 会社名は、既に登録された他社名や商標等と酷似していてはならない。
c. 会社名の選定においては、Emblems and Names(Prevention of Improper Use)Act, 1950(標章および名称(不適切使用防止)法)の定める規定に従う必要がある。
第3段階:会社設立証明書の取得
各会社の設立・存在を法的に証明する「会社設立証明書」(Certificate of Incorporation)を、企業登録局より取得する必要がある。同証明書の取得には、以下に記載する必要書類a~cを進出地域(州)の企業登録局に提出し、同局への会社登録手続きを完了する必要がある。
a. 基本定款(Memorandum of Association):基本定款は、会社名、住所、目的、資本金および公証人役場での認証および領事館の認証または公印確認(アポスティーユ)が付与された応募者に係る情報書(Subscription Sheet)を含む。さらに、Subscription Sheetを含めた基本定款のコピーを提出する必要がある。
b. 付属定款(Articles of Association):基本定款と併せ、提出が義務付けられる。取締役会の規定、株式譲渡などの会社運営上の事項を記載。特に、合弁会社の場合は、株式譲渡などで会社設立後に問題となることもあり、慎重な対応が必要となる。付属定款の一部になる公証人役場での認証および領事館の認証またはアポスティーユが付与されたSubscription Sheetを含めた付属定款のコピーを提出する必要がある。
c. その他必要書類
Form DIR12:設立時における各管理職の役職の詳細を記載
Form INC22:登録された会社(事務所)の住所を記載、賃貸契約書等のコピー又は公共料金の請求書と共に当該賃借事務所の所有者からの賃借許可書(No objection certificate)を付ける。
Form INC-7:2013年会社法で規定されたすべての手続きを完了したことの証明書
上記手続きの詳細および必要書類のフォームはインド企業省ウェブサイトから入手可能です。
会社登記が行なわれると、①30 日以内に現地法人で取締役会を開催し、「監査法人の決定」、 「銀行口座開設の決定」を決議します。インドで は全ての法人に対し、監査法人の監査を受け ることが義務付けられていますので、この決定が必須事項となります。
会社登記の完了により、現地法人のリーガ ルな活動が可能になる訳ですが、コマーシャル な活動を行なうためには更に 2 つのステップが 必要となります。
②まず、現地法人の取締役会で 銀行口座の開設を決議したことを受けて、銀行 に口座を開設すると、日本から資本金の送金 が可能となります。当初決定した授権資本金額 の範囲内で第 1 回目の資本金払い込みを行ないます。
③資本金がインドに到着して 30 日以内 にインド中央銀行に対し「外貨投資実行」の報 告をします。
④また、並行してインドで活動を行な うのに必要な税金番号を取得する必要があり ます。
資本金の到着、税金番号や輸出入コードの取得を経て、以 降はコマーシャルな活動を行なえるということに なります。これらの手続きには会社登記後およ そ 1 ヶ月が必要ですので、先ほどの会社登記 に要した3ヶ月とあわせると、当初準備からスタ ートしておよそ 4 ヶ月程度の時間がかかること となります。
なお、最近では、レンタルオフィス、レンタル工場、バーチャルオフィス(?)なども多く見らます。デリーあたりでも坪1万5000円くらいであったりするが、やはり、日系企業がやっているところの方が良いでしょう。